
図解でやさしく~弧度法編~
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Ⅳ
其の参、残りの角に挑戦
其の弐、有名角を理解

この記事では使いませんが、変換公式を示しておきます。これで充分であればそれでもOKです。受験を想定している場合や、ラジアンのイメージもつかみたい場合はページを下に進めてください。公式が頭に入っていれば、すべての角度でなんとかなるといえばなります。とはいっても例えば共通テストの数学は鬼神の速さが計算に求められるので、余白に3桁の約分をしている暇はありません。それにとても簡単ですし、これくらいの図形感覚は必須だとも思うところです。
それでは、まず30°と45°と60°の3つの有名角にだけは素直に公式をあてはめます。
そうすれば残りの角度は「すべて」表現可能だからです。
小さい方からπ/6・π/4・π/3です。
分母が大きいと数字は小さくなります。この順番になることを納得してください。
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其の壱、弧度とは
数Ⅱの三角比には弧度法が登場します。これまで30°・59°・180°と度数で表現していた角度の世界が一変して、πラジアン・3π/4ラジアンのように弧度で表現されることになります。
この記事の対象学生
角度をすぐにラジアンにできない
この記事の目標
三角比の方程式やグラフにおいて、角度を即座にラジアンにできる
変換公式は使用しない
このページでは、すべての角度を一瞬で弧度に表すための勘所を図入りで解説します。小学生のころから慣れ親しんできた度数を手放すので、最初はホームシックにかかる(凡ミスする)かもしれませんが、最後まで読めばもう大人の仲間入りです。余談ですが、著者が直接訊いた話では、小学生の時に1cmを「1センチです」というと担任の先生が「センチメートルでしょ!」と怒ったみたいに、厳しい数学の先生には「6分のπです」を許さずに「ラジアンでしょ!」と怒る人がいるようです。
(数学が苦手で余裕のない人は読み飛ばしてOK)
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右図に示してあるように、
「120°~330°」までの角度はどれも
「直角 or 半円+有名角」で表されます。
120°=90°+30° 210°=180°+30° 300°=270°+30°
135°=90°+45° 225°=180°+45° 315°=270°+45°
150°=90°+60° 240°=180°+60° 330°=270°+60°
この規則性を使わない手はありません。
さて、それでは残りの角度も調べていきましょう。
残りの角度はどれも次のような法則で単位円上に配置されています。
第二象限――「直角」+有名角
第三象限――「半周」+有名角
第四象限――「半周+直角」+有名角
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Ⅱ
其の肆、いざラジアンへ
角度の配置の規則が理解できれば、一気にラジアンにおきかえていきます。
それぞれ直角は90°ずつ増えるのでラジアンでは「π/2」ずつ数値も上がります。
90°=π/2 180°=π 270°=3π/2 360°=2π ですから次の表にまとまります。
120°=90°+30°=π/2+π/6 210°=180°+30°=π+π/6 300°=270°+30°=3π/2+π/6
135°=90°+45°=π/2+π/4 225°=180°+45°=π+π/4 315°=270°+45°=3π/2+π/4
150°=90°+60°=π/2+π/3 240°=180°+60°=π+π/3 330°=270°+60°=3π/2+π/3
あとは計算だけです。暗算でもできるレベルの式です。
225°をラジアンで言い表したいときに、約分するよりも手軽であることがわかるかと思います。
なにせ、225°は「180°と270°の間の、第三象限の角度」であり、
それはつまるところ「半周(π)+あとちょっとの角度」ということであり、
何を隠そうそれは「あと45°」なのであり、
ということは「π+π/4」であり、それって結局は「1+1/4」なのです。
シンプルにイメージすると、かなりさっぱりすると思います。以下の図です。

追加アンカー
円の一周を度数で考えると360°であり、それを弧の長さで考えると円周の公式より2πrであることは、実は中学一年生で習います。弧度法はその漢字が示すように、まさに弧に焦点を当てるわけです。1°が円の全体の1/360であるわけですから、1°の弧の長さは2πrの1/360になります。数Ⅱの教科書で登場する1°=π/180 rad(ラジアン)はこのようにして誕生しました。
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Ⅴ
其の伍、シンプルに可視化
慣れてくると、どの角度も「直角と有名角の組み合わせ」でイメージできます。
そうなってくると簡単な式のラジアンの足し算が頭に浮かびます。
適当な角度をイメージして次の図を見てみましょう。
どんな式が浮かぶべきで、どう計算されるかチェックできます。

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Ⅵ
其の陸、もっと簡単に計算
上の図で見てみると、第三象限はπ+●ですからかなり計算しやすいですね。
それよりは難ありといえど、第二象限も計算は大丈夫だと思います。
問題は第四象限ですが、ここは種々工夫ができます。
① 第二象限+90° (+πなのでかなり計算しやすい)
② 360°から引く (2π-有名角なのでこれも計算しやすい) ←おすすめです
簡単に計算できる場所を下の単位円にまとめています。

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最終回、アウトプット
以上で弧度法の基礎をおしまいにします。
毎回公式を当てはめて約分していては、この感覚は身についてきません。
なにより弧度のイメージが頭でしっかりできると不等式やグラフの学習も理解しやすくなります。
また、一周を超えた角度(たとえば945°など)をラジアンで表したい場合も、
分母に180をおいて約分するよりも、単位円上のどの象限の有名角であるか考えてみてください。
一周は360°、二周は720°、三周は1080°だから、三周目だなと見当をつけて、
945°から720°を引いてあげて、225°ですから、三周目の第四象限の45°の場所だと特定して、
6π-π/4と表現したいところです。
手が先に動く無思考の約分でもいいのはいいですが、
図形の感覚で楽に解くというロイヤルな手順のよき点は、
直感的にどこの角度のことなのか理解して解いているという点です。
難しい技というのでもなく数問解くうちに身につく感覚です。
ぜひ図形の地力を挙げてください。
最後に、アウトプットを用意しました。
それぞれの角度がラジアンでどうなるのか、答えを書いていない全体図をおいておきます。
自分でそれぞれの角度を「弧度法」にしてみましょう。
